2015年03月13日

詩 『帰郷』


『帰郷』



まるこ1.jpg



---バウ!元気だったか

イヌは僕の腹に飛び付いてきた




---まあ、ちょっと いろいろあってね

逞しい爪が 結構痛い
僕はさりげなくイヌの前足を持って、ストンと地面におろした




---なんだ、シケタつらして
   また会社の人間関係か

イヌは座って、舌を出して ハッハッ と僕を見上げた




---まあね、人間っていうのはいろいろあるんだよ 
   いいなあ お前は悩みがなくて

僕はイヌの隣に座り、膝を抱えて雲を見上げた
首のどこかの骨が ポキ と鳴った




---生きているって幸せだぜ だって死んでないんだから!

イヌは フン と鼻をならし 右前足の爪を ガジガジ噛んで
その足で 目のあたりをゴシゴシした




---そうだね〜 お前みたいになにもしなくていいなら幸せだよなー

僕は 横目でイヌを見て ため息をついた




---はは ばかだなあ
   鎖で繋がれていても 自由でいられるんだよ
   お前は繋がれていなくっても 
   なんだかいつも 不自由だよなあ

イヌは腹這いになり 
強烈な匂いの 大きなあくびをひとつしたあと 
大きな顎を 揃えた前足の上にのせた



-----繋がれていなくても 不自由・・・・か



僕は 目を閉じているイヌの顔をじっと見ていた


つやつやのイヌの鼻が ヒクヒク としている


大きく垂れた耳が ピクンと動いて 僕の様子を伺っているのだ


風が そよ と 通りすぎた


たんぽぽの綿毛が イヌと僕のあいだに ふわりと落ちた


夕焼けが イヌと僕の 長い影を作っている



まるこ2.jpg


posted by ユキ ラクシュミナラヤニ at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩的なもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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