グアテマラで訪れた遺跡の中でも、あまり観光客が訪れていないところ。
ヤシャ遺跡。
バスなどはない未開拓地なので、個人旅行ではタクシーでしか来るすべがない場所。
バンを降りた瞬間から、ものすごい獣の叫び声が聞こえて、とても驚いた。
ホエザル、という猿の声のよう。
その名のとおり、ずっと、吠えている。
なにを言っているんだろう・・・・。
わたしはこの遺跡にいる間、ずっと、彼らの感情に聞き耳を立てていた。

グアテマラ最大のティカル遺跡もよかったけれど、
わたしは、この、人知れていないヤシャ遺跡に、とてもビンビン、感じるものがあった。
荒々しいと表現したらよいのか・・・・、とにかく、すべてがまだ「ありのまま」だった。
いくつものピラミッド型の神殿があったのだけれど、
まだまだ、まだまだ、まだまーだ、発掘されていない数え切れないほどの小山が、
たくさんたくさん、秘められていた。

かつての神殿は土に埋もれ、草が茂り、木々が根を張り、その下に安らかに眠っている。
なんて、神秘的なんだろう。
魅力的過ぎて、ゾクゾクした。
広大な敷地の中、
目指している場所になかなか着かず、迷い込んだかのように現れた神殿に、
どうしても登りたくなった。

くたくたに疲れていたのに、登る足取りがとても軽い。
驚きとともに、あっというまに頂上に到着した。
この頂点で、どれくらい時間を過ごしたのだろう。
時間の感覚が、なにもわからなかった。

とても長い時間、ここに座って、ホエザルの鳴き声を聞いていた。
黄色や赤のたくさんの鳥たちが、バッサバッサと、頭上を通り過ぎていった。
いまだかつて聞いたことの無い、とても美しい鳥の鳴き声を、たくさん聞いた。

風が、そよいでいた。
太陽が西に傾いていた。
雲が、ゆっくりと流れていた。

わたしは、2000年前から、この空にいたのだ、と感じた。
わたしは、人間ではなかった。
空を翔る、ものだった。
空からすべてを見ていた。

湖へと向かった。
空の夕日と、湖面の夕陽が、両方、輝いていた。

涙が出てきた。
わたしは、かつて昔、この水の上にいて、すべてを見ていた。

「赤い手」と呼ばれる、ヤシャ遺跡で一番高い神殿へと登った。

すると、彼が、わたしを出迎えてくれた。

彼は遠くを見つめ、宇宙の声を聞いていた。
それは、
暮れかけた昼と、始まりかけた夜の、絶妙な融合のときだった。

美しさに、わたしのなかのなにもかもが、止まった。
満月は、もうすぐ。

(つづく)
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