2015年01月30日

メキシコ その7(赤目の犬とのエピソード)


「赤い目の犬とのエピソード」


テオティワカンにて。

太陽のピラミッドを降りたあと、月のピラミッドへとまっすぐに続く、「死者の道」を歩いていたとき、正面、遠い向こうから、物売りのおじさんと一匹の犬が歩いているのが見えた。

わたしは、その犬に赤いものがチラチラと見えていたので、なんだろう?と不思議に思い、そちらに向かいながら、その犬から目が離せないでいた。

しばらく歩いて、近づいてきた物売りのおじさんがわたしに 「ほとんどタダだよ、セニョリータ」 となにかを売ろうとしているけど、わたしはそのおじさんの後ろにいる犬をずっとみつめていた。

犬は片目が赤かった。

赤目なのかな?とよくみると、左目の部分だけ赤い肉になっていた。

しつこく売りつけてくるおじさんに、ジェスチャーで、私の左目を指差し、そして、犬を指差して、痛そうな顔をして見せたら、おじさんは理解してくれたようで、この事態のいきさつを、たどたどしい英語で話してくれた。

心無い人が、おもしろがって弓矢でこの犬を狙ったのだそう。

そして、左目を射抜いたのだそう。

その人たちはメキシコ人で、この辺の人ではないという。

「やられたのは3週間くらい前だよ。 このワンコはとってもいい犬なんだ。 なんでそんなひどいことするんだ。」

そう言って、おじさんは痛そうな顔をした。

毎日、ここで犬と会って、過ごしていたのだろう。

「でもこの辺の人が、ご飯あげるからとても元気なんだ。だから、この犬は幸せなんだ」

と慣れない英語で、一生懸命説明してくれる。

「観光客もなにかくれたりするから、この犬は幸せなんだ。目がこうなってしまったけど、幸せなんだ」

そう、何度も何度も言うおじさん。

わたしはおじさんから何も買っていないというのに、別れ際に

「Gracias (ありがとう)」

と言って、おじさんは去っていった。

わたしは、向こうの日陰へと移動した犬をみつめた。

ゆっくり、寝そべる犬に近づいた。

警戒している、犬。  

恐怖の記憶が蘇ってきているのか。

驚かさないようにそっとリュックに手を入れて、その手を出した瞬間。

犬は、ビクッ!と飛び起き逃げようとした。


mexico53.jpg


でも、わたしの 「大丈夫だよ」 というまなざしと、手に持っているものを見て立ち止った。

わたしは、ランチ用に持ってきたパンを、食べやすいように小さくちぎって、犬の前にポイ、と投げた。

急いで犬はパンの欠片をくわえ、すごい勢いで食べた。

大き目のパンを、少しずつ、ちぎって、犬にあげた。

ひとちぎりずつ、ひとちぎりずつ、

馬鹿な人間が犯した過ちを、お詫びしながら。

そして、

この犬が片目を失ったことで、以前よりもさらに、受け取るものが大きくなりますように、と願いながら。

すべてを食べきった犬は、じっ・・・・、っとわたしを見ていた。

わたしは、「おいしかった?」 と犬に話しかけ、「じゃあね」 と背を向けた。

しばらく歩いて振り返ると、まだ、犬はわたしを、じっ・・・・と見ていた。

わたしは、月のピラミッドを目指して歩きながら、

神があの犬の姿をしてわたしの前に現れたのだと、気づいた。

真っ青な大空に、たくさんのドラゴンが飛んでいた。

合掌

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posted by ユキ ラクシュミナラヤニ at 23:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 《旅》グアテマラ・メキシコ2015.1~2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本当ですね。
ドラゴンとしっかりつながってらっしゃるんですね。
メッセージがいろいろな形であらわれること
心の眼を大事にしたいと思いました。
ありがとうございます。
Posted by かおりん at 2015年02月01日 07:08
かおりんさん
コメントありがとうございます。
生活のあらゆるところで、気付きが溢れていますね。
丁寧に生きる、大切さを身に沁みて実感しています。
Posted by ラクシュミナラヤニ ユキ at 2015年03月23日 09:16
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