「赤い目の犬とのエピソード」
テオティワカンにて。
太陽のピラミッドを降りたあと、月のピラミッドへとまっすぐに続く、「死者の道」を歩いていたとき、正面、遠い向こうから、物売りのおじさんと一匹の犬が歩いているのが見えた。
わたしは、その犬に赤いものがチラチラと見えていたので、なんだろう?と不思議に思い、そちらに向かいながら、その犬から目が離せないでいた。
しばらく歩いて、近づいてきた物売りのおじさんがわたしに 「ほとんどタダだよ、セニョリータ」 となにかを売ろうとしているけど、わたしはそのおじさんの後ろにいる犬をずっとみつめていた。
犬は片目が赤かった。
赤目なのかな?とよくみると、左目の部分だけ赤い肉になっていた。
しつこく売りつけてくるおじさんに、ジェスチャーで、私の左目を指差し、そして、犬を指差して、痛そうな顔をして見せたら、おじさんは理解してくれたようで、この事態のいきさつを、たどたどしい英語で話してくれた。
心無い人が、おもしろがって弓矢でこの犬を狙ったのだそう。
そして、左目を射抜いたのだそう。
その人たちはメキシコ人で、この辺の人ではないという。
「やられたのは3週間くらい前だよ。 このワンコはとってもいい犬なんだ。 なんでそんなひどいことするんだ。」
そう言って、おじさんは痛そうな顔をした。
毎日、ここで犬と会って、過ごしていたのだろう。
「でもこの辺の人が、ご飯あげるからとても元気なんだ。だから、この犬は幸せなんだ」
と慣れない英語で、一生懸命説明してくれる。
「観光客もなにかくれたりするから、この犬は幸せなんだ。目がこうなってしまったけど、幸せなんだ」
そう、何度も何度も言うおじさん。
わたしはおじさんから何も買っていないというのに、別れ際に
「Gracias (ありがとう)」
と言って、おじさんは去っていった。
わたしは、向こうの日陰へと移動した犬をみつめた。
ゆっくり、寝そべる犬に近づいた。
警戒している、犬。
恐怖の記憶が蘇ってきているのか。
驚かさないようにそっとリュックに手を入れて、その手を出した瞬間。
犬は、ビクッ!と飛び起き逃げようとした。

でも、わたしの 「大丈夫だよ」 というまなざしと、手に持っているものを見て立ち止った。
わたしは、ランチ用に持ってきたパンを、食べやすいように小さくちぎって、犬の前にポイ、と投げた。
急いで犬はパンの欠片をくわえ、すごい勢いで食べた。
大き目のパンを、少しずつ、ちぎって、犬にあげた。
ひとちぎりずつ、ひとちぎりずつ、
馬鹿な人間が犯した過ちを、お詫びしながら。
そして、
この犬が片目を失ったことで、以前よりもさらに、受け取るものが大きくなりますように、と願いながら。
すべてを食べきった犬は、じっ・・・・、っとわたしを見ていた。
わたしは、「おいしかった?」 と犬に話しかけ、「じゃあね」 と背を向けた。
しばらく歩いて振り返ると、まだ、犬はわたしを、じっ・・・・と見ていた。
わたしは、月のピラミッドを目指して歩きながら、
神があの犬の姿をしてわたしの前に現れたのだと、気づいた。
真っ青な大空に、たくさんのドラゴンが飛んでいた。
合掌

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ドラゴンとしっかりつながってらっしゃるんですね。
メッセージがいろいろな形であらわれること
心の眼を大事にしたいと思いました。
ありがとうございます。
コメントありがとうございます。
生活のあらゆるところで、気付きが溢れていますね。
丁寧に生きる、大切さを身に沁みて実感しています。