親戚のおばちゃんの背中に抱きつく。
親戚のおじちゃんの腕にぶら下がる。
父方のいとこたち。
母方のいとこたち。
トランプゲーム。スピード、大貧民(大富豪)、ババヌキ、神経衰弱、七並べ。
大好きなおじいちゃんとサイクリング。
甲府の動物園。遊亀公園。紙芝居。型抜き。水飴。影ふみ。ひとりダンス。木登り。
愛犬ロッキーを抱き締めて、もみくちゃにして可愛がってあげるときの、ロッキーの体温。
大好きなロッキーにそれを毎日する、専用の、汚れても臭くなってもOKの紺色のジャージ。
真っ青な空。白い雲。宇宙。宇宙船。
田んぼの道路の、コンクリートの上に寝転んで、温かい石の上からみる、夕暮れのピンク空。
はしゃいでまたいだ、迎え火。
茄子の牛と、キュウリの馬。
母が毎日、一杯のコーヒーを飲むのを我慢して、貯めた小銭で買ってくれた、ピンクのサンダル。
目が悪いおばあちゃんの足の爪を、代わりに切ってあげる、日溜まりの縁側。
兄がお年玉で買った、庭の卓球台。
黄色いローラースケート。
軽トラの荷台に乗って、サーフィンごっこ。
母がホースで庭の花壇に、大きく水をまくときの、ワクワク感。
父が私の足をもって、ブンブン振り回してくれる。はしゃぐ私。
鳥かごの中の喋る鳥に、「大好きだよ」を教える私。
早朝のクワガタとり。土の臭い。木の幹の感触。
死にかけた雀を拾ってきた。手のひらの上で、一声鳴いて、死んでしまった。号泣のわたし。
寄りかかって、体ごと倒れて泣いた、居間の網戸。
セミは一週間の命だと聞いて、ワンワン泣いた、わたし。
幸せな幼少期。
大家族の中の、元気一杯の、わたし。
胸が切なくなる、想いで。
抱き締めたい。