2014年07月18日

詩 「完璧であり、無」

「完璧であり、無」




日没近くを待たずに、ヒグラシが鳴きはじめた。

曇り空が、山の空気を、一気に冷たくしていく。

わたしはテラスに座り、虫たちの羽音を聞いていた。





ここのところずっと、

心が、静けさの中にいる。

なにかが生まれる、前兆の静けさ。

完璧であり、無。

強さであり、潔さでもある。

この静けさを邪魔するものは、中に入れない、覚悟がある。





表現者として。

私が見るこの世界の、表現者として。

降り注ぐ光を、両腕を開いて受け止めている。






魂が、とても、静かな場所にいるようだ。

言語ではない情報が、溢れている。

わたしは、静かに耳を傾けている。

そっと、目を閉じる。 

再び、開けるのを躊躇するくらい、心地がよい。

柔らかな風が、旋律を奏でる。

輝きが、キラキラと瞬いている。





昨夜、白い小さな蛾がやってきた。

頭上を、螺旋を描いて飛んでいた。

わたしは、ゴロンと仰向けになり

螺旋から生まれる細かい光の粒を見ていた。

そこには、深い宇宙があった。




空の雲が晴れ、太陽が少しあたりを明るくしてきた。

ヒグラシは鳴くのをやめ、アブラゼミが代わりを務めている。

この世界は完璧であり、無。

わたしは目を閉じて、わたしを、ただ感じている。

「わたし」は 静かに消えてゆく。


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posted by ユキ ラクシュミナラヤニ at 17:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩的なもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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