冷蔵庫にはショウガと、梅干ししか入っていなかった。
今日、東京出張から戻ってきたから、なんにもない。
仕方がないから、お米を炊いた。
お米なら、たくさんある。
1合炊いて、全部食べてやろう!と思った。
梅干しと、すりごまと、ユカリで、食べてやるぞと、意気込んでいた。
質素は、限りなく質素、でも、わたしは全然平気なタイプ。
基本、バックパッカーだから。
人生の。
畳に正座をして、どんぶりにたくさん入ったお米と向かい合った。
冷蔵庫になにもなくても、お料理しなくても、お米さえあれば幸せだ。
きちんと合掌をして、「いただきます」
さっそく、ユカリをかけて、一口いただいた。
よく噛んで、お米、を味わう。
お
ムサシが来た。
お隣のワンコだ。
ここは山の中だから、いつも放し飼いなのだ。
カシカシ、と爪の音をウッドデッキに響かせ、
ニョコッ、と窓に顔を出した。
お!
よく来たな、ムサシ。 まあ、座れや。
最近、キミは、よく来るな。
お菓子、目当ては、知ってるんだぞ。
わたしが好き・・・・だけじゃないだろ、ね、ムサシ。
まあまあ、いいから座れって。
網戸越しに、ジーーーーーーー、とわたしを見ている。
なんだ、ムサシ、お菓子ないよ。
ジーーーーーーーーッ
えー?じゃあ、米、食べるか?
どんぶりから、左手のひらに、ちょこっとだけ乗せる。
ペロッ、と舐めたくせに、フンッ!と鼻息だけ吐いて、食べなかったときに、
おいおい、舐めたなら食べてよ、わたし食べれないじゃん!と、
よくありがちな、ショックを受けない程度の、少しだけの量から、まず。
フンフン、ムサシ、匂いを嗅ぐ。警戒。
ペロッ、お、舐めた!
ガフ、おお、食べた!
ムサシはお米も好きらしい。 はは、メタボめ。
私が、一口。 ムサシに一口。
黒ゴマかけて、一口。 ムサシにも一口。
梅しそ、のせて、一口。 ムサシにも一口。
こんな歌、昔なかったっけ?
♪ムサシとボクとで、はんぶんこ〜〜
よしよし、いい子だね。
ペロペロ、お米の一粒一粒まで、手のひらを舐めてくれる。
あったかいな、ムサシの舌。
きもちいいな。
ガフガフ、いいながら、私の手から食べるムサシ。
うまいか。 そうか、よかったな。 ガフガフ
かわいすぎる、ムサシ。
愛してるよ、ムサシ。
ムサシ。