2011年04月23日

シワシワの手


先日、東京で。

ホームから電車に乗り込みました。

横長の座席の端っこのあたりのつり革につかまりました。

その日はお天気が良く、気温もぽかぽかと暖かく、電車の中ではジャケットの下に、じんわりと汗ばむほどでした。

疲れて、焦点が合わない目を、ぼんやりと窓の外に向けていると、目の前で不思議な動きをする老人が、視界に入りました。



老人は、電車のドアの傍らに立ち、本を片手に広げながら、もう片方の手をしきりに動かしていました。

人差し指をのばしてみたり、てのひらをゆらゆらと揺らしてみたり。

グーにしたりパーにしたり、ササッと空中を切るように動かしたり。



はて?

なんの合図なんだろう?



わたしは老人の読んでいる本を、気付かれないように覗きこみました。

本は書店のカバーがかけてあり、表紙は隠されていたのですが、ページには図解で手話のかたちが載っていました。

それを見ながら、老人は、わたしが凝視しているのも気がつかず、

まわりのことなんか、気にもせず、

一生懸命、手を動かしては練習していました。

手を動かしていたかと思うと、ふ・・・・・と動きを止め、何かを考えているような神妙な顔つきで

じーーーーーーーーっ、と空間を睨んでは、

また、せっせと手話の練習をするのでした。



老人は、おそらく70歳は過ぎているでしょう。

やさしそうな目尻のシワと、年輪を重ねたゆるゆるの手の甲、たくましい5本の指、短く切りそろえられた爪が印象的でした。

本にかけられたカバーは、新品というには程遠く、くたくたにくたびれて、数え切れないほどページを綴っていることを物語っていました。

どうして、その年齢から手話を学んでいるんだろう。

どうしても、会話したいかたがいるのかしら。

ボランティアをしているのかしら。

愛する人が、耳が聞こえなくなってしまったのかしら。



おじいさん。

がんばって。

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posted by ユキ ラクシュミナラヤニ at 08:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 心あったかもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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